碧眼の副社長は愛をささやく
初めて入るエリックの部屋は、店と同じ、30畳の1DK。

元々、倉庫だったのを改装したのを、借りたという。

木の5人がけの大きなテーブルに、木の和ダンス。

観葉植物があちこちに置かれており、自転車もインテリアの一部として、
飾られている。

目を引くのは、赤いレトロな一人がげの椅子。
どっしりとしたその椅子は、全体の雰囲気を引きしめてくれていた。

クイーンサイズと思われるベッドに、大きな本棚が2つ、
背表紙には、日本語ではない文字が並んでいる。

「びっくりした?」

「ええ」

「ここを訪れた人はだいたい驚くんです」

エリックの輝く顔を見る。

「最近のマンションはモダンなのが多いけどね、
 秘密基地みたいにしたかったんだ」

「秘密基地、少し分かるわ」

「フランスでは蚤の市なんかも盛んで、古い物を大切にする、
 新しいだけでない、歴史の魅力も感じたいんだ」

そう言って、和ダンスをなでる。

「すごいのね、一見ばらばらなのに、見事に調和している、
 すごく、いごこちのいい空間になっているわ」

「綾乃に分かってもらえてうれしいよ」

そう言って、腰に手をまわし、ほほに口づける。
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