碧眼の副社長は愛をささやく
その後、エリックがお土産屋をのぞいている間、
私は海を見たくて、先に店を出て、海岸線沿いを歩いていた。

寄せては返す波、その音が心地よい。

自然って、それだけで芸術品よね。
恋愛で幸せな時って、自然が輝いて見えるって言うけれど、
今がそうなのかなと、穏やかな気持ちで海を眺める。


「君、1人?」

見知らぬ男性に声をかけられる、
少し軽そうな感じの人で、声に強引さが感じられる。

「いいえ、連れがいます」

笑顔で、しかしきっぱりと断る。

「お友達?」

「え?」

最初の印象通り、強引に声をかけてくる。

「せっかくだからさ、いっしょに・・・」


「綾乃!」

急にエリックの声がして、後ろから抱きしめられる。

「エリック・・・」

エリックの腕に私の手を乗せる。

「ああ、男か・・・」

そう言って、声をかけた男性は、今までの強引さが嘘のように、
そそくさとその場を去った。


エリックの腕をほどき、体を反転させる、エリックの顔を見ると、
男性が立ち去った方を、まだにらんでいた。

「エリック・・・」

「凶なんか引くからだ・・・綾乃は誰にも渡さない」

そう言って、ぎゅっと抱きしめられる。
エリックがいてくれるだけで、安心感に包まれる。
彼の存在の大きさを感じていた。

「大丈夫よ、私の心には、あなたしかいない」

その後、エリックの顔つきは普段の優しい顔つきに戻ったが、
私の肩に手を置き、傍を離れなかった。
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