碧眼の副社長は愛をささやく
「こっち向いて」

エリックの言葉に無言で返す。

ちらりと顔だけエリックを見ると、エリックは優しい顔で、
私を見つめている。

ここは宿の部屋に備え付けの温泉。

2人入ったら、肌と肌が触れ合いそうなぐらい小さい。


エリックに連れられ、2人で温泉に入るも、
私はずっとエリックに背中を向けていた。

だって、恥ずかしいんだもの。


「触っちゃ駄目!」

エリックが手を伸ばす気配を感じ、後ろを向いたままちじこまる。

体中の血液が、ものすごい勢いで、回っているのを感じる。

温泉を味わうどころではない。


「こうしていると、思い出す」

「・・・・何を?」

「初めて寝た時も、背中を見せていたね」


その言葉に、ざばっと勢いよくお風呂から立ち上がる。

もう限界!

「エリックは100数えてから出てきて!」

そう言って、エリックに背を向けたまま、勢いよく走り去った。
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