碧眼の副社長は愛をささやく
「綾乃」

帰ってきたエリックは、真っ赤な薔薇の花束を持ち、
前髪を少し上げていた。

そのまま私の前に立ち、片膝をついて、しゃがむ。

「僕と結婚して下さい」

差し出された薔薇の花束。
胸はどきどき言っている。

「はい」

そう言って花束を受け取る。

立ち上がったエリックは、私の左手を取り、指輪をはめた。

白いダイヤが輝く、『グラン ジュテ』の指輪。

「ありがとう」

そう言って、深く口づけ合う。

そしてそのままだきしめ合って、顔だけローラに向け、お礼を言う。

「ローラ、ありがとう」

エリックのこの行動が、ローラに言われたからだと、容易に想像がついた。

「罪消しよ」

ケーキを食べ終えたローラが、紅茶を飲みながら、ふんと答える。

多分、罪滅ぼしと言いたいのね、と思いながらも、
予想もしていなかったハプニングに、心温まる思いがしていた。
< 84 / 88 >

この作品をシェア

pagetop