私、今日からお金持ち目指します?
「さて、邪魔者も行ったところで、姫、参りましょうか」

「お手をどうぞ」と上条勝利が手を差し出す。

その手を見つめ、本当にイイのだろうか? こんな晴れがましい席に私のような者が……と思う。その思いが躊躇いとなり、彼の手が取れない。すると彼が言う。

「胸を張って堂々とする! せっかくのドレスが泣くよ。言っただろ? 第一印象は最初が肝心だと。自信の無さは印象を低レベルにまで下げる。ハッタリでもいい。我こそは、この場の女王! ぐらいに思っておけ!」

女王って……そんなぁ無茶な……。

「それに、俺が一緒だ。まさか隣に立つ女がイミテーションだと、誰も思わない。俺の横に立ったと同時に、お前は本物になる!」

確かに……上条勝利のパートナーが、落ちぶれた老舗洋菓子店の引きこもり娘だと誰も思わないだろう。

上条勝利を見上げる。

「離れないで下さい。一緒にいて下さいよ、約束ですよ」

「仰せのままに」と上条勝利が王子のお辞儀をする。
その優雅な身のこなしに、目が釘付けになる。

全く、なんて男だ! まんま王子じゃないか! なら、私は姫! プリンスに似合うプリンセスになる! グッと胸を張り、背筋を伸ばす。

「やれば出来るじゃないか」

満足げに上条勝利が微笑む。

「では、我が姫、参ります」

再び差し出された手を、今度はシッカリ握り、彼と共に会場に向かう。
< 107 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop