私、今日からお金持ち目指します?
エピローグ
「おめでとう!」

今日は結婚式だ。私と上条勝利のではなく、日下部さんと山下さんのだ。

山下さんは、上条勝利の系列会社と事業契約が締結し、日下部さんのご両親にようやく認められた。その陰には、上条勝利の口添えがあったらしい。

「私も下条さんたちの結婚を心待ちにしているんだけど、まだなのかしら?」

セミナー終了から早一年。私たちの付き合いは……多少、山もあり谷もあったが、まぁ、順調だ。だが……。

日下部さんの質問に苦笑いを浮かべながら、「もうすぐ……かな」と曖昧に答える。

「上条さんったら、スピードが命、とか言っていなかった? 本当、何をやっているんだか」

日下部さんの言わんとすることは分かる。私だって……やっと腹を括ったのだ。括ったからには、早く結婚したいと思う今日この頃だ。なのに、富豪の結婚って……。

「準備云々が色々あるみたい」と言う私に、嗚呼と日下部さんは頷き、「そっかぁ」と気の毒そうな顔をする。

「私たち以上に大変なんだ」

旧家に育った彼女だから分かるのだろう。現に、親や親戚たちが結婚話に参加してきて、色々準備に手間取った、と言っていた。

でも、私たちの場合、一番煩いのは……上条勝利だった。「君を世界一の花嫁にする!」と宣い、こだわりにこだわるのだ。本当、勘弁して欲しい。
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