私、今日からお金持ち目指します?
「あらぁ、イイじゃない!」
リビングに入った途端、私の全身を眺め母が言う。
「でも、そのお洋服ならノーメイクより、髪をアップにして薄化粧した方が良いわよ」と、有無も言わさず鏡台の前に連れて行かれる。
「小さな頃は、よくこうやって髪を触らせてくれたわね」
そう言えばそうだった。
母はお嬢様育ちだったが、手先が器用だ。それが顕著だったのはヘアスタイル。自らの髪もだが、娘たちの髪を触るのが好きで、美容師顔負けの複雑な編み込みを毎日してくれた。
「いつからかしら、貴女が髪を触らせてくれなくなったのは……」
母の淋しそうな顔が鏡に映る。
あれは……そうだ! 祖父がまだ存命で、我が店『梟(Hukuro)』も繁盛していた頃。確か私が小学一年の頃だ。
お得意様のご子息だったろうか、彼のバースデーだか何だかのパーティーに、家族一同お呼ばれした日のことだ。
あの日もこんな風に母が綺麗に髪を結ってくれて……思い出した……ピンクのフワフワドレスを着せてもらったんだ。
嬉しくて嬉しくて、何度も父の前でポーズを取り、目尻を下げた父が、何枚も写真を撮ってくれたのを覚えている。
だが、その喜びを粉々に砕いた奴がいた。
リビングに入った途端、私の全身を眺め母が言う。
「でも、そのお洋服ならノーメイクより、髪をアップにして薄化粧した方が良いわよ」と、有無も言わさず鏡台の前に連れて行かれる。
「小さな頃は、よくこうやって髪を触らせてくれたわね」
そう言えばそうだった。
母はお嬢様育ちだったが、手先が器用だ。それが顕著だったのはヘアスタイル。自らの髪もだが、娘たちの髪を触るのが好きで、美容師顔負けの複雑な編み込みを毎日してくれた。
「いつからかしら、貴女が髪を触らせてくれなくなったのは……」
母の淋しそうな顔が鏡に映る。
あれは……そうだ! 祖父がまだ存命で、我が店『梟(Hukuro)』も繁盛していた頃。確か私が小学一年の頃だ。
お得意様のご子息だったろうか、彼のバースデーだか何だかのパーティーに、家族一同お呼ばれした日のことだ。
あの日もこんな風に母が綺麗に髪を結ってくれて……思い出した……ピンクのフワフワドレスを着せてもらったんだ。
嬉しくて嬉しくて、何度も父の前でポーズを取り、目尻を下げた父が、何枚も写真を撮ってくれたのを覚えている。
だが、その喜びを粉々に砕いた奴がいた。