私、今日からお金持ち目指します?
「ほら、人生の『終活』あれよ」

母の言う『しゅうかつ』は『就活』ではなく『終活』だなと漢字を当てはめる。

「冬彦さんとそのセミナーに行って、エンディングノートを書いたの」

またセミナーだ。最近セミナーづいているな、と呆れながら話の続きを聞く。

「悔いの無い人生を送る夢リスト? それを列記したの二人で……でね、それ書いていて……」

鏡の中の母が私を見つめる。

「時間なんてアッという間に過ぎるのに、冬夏を私たちの都合で巻き込んだのは、可哀想だったなっていう話になったの」

否、可哀想なんかじゃない。大学に入ったはいいが、いきなり夢は破れたし……かといって、私は絵を描く以外何もできない子だ。店が無かったら、一生、親の脛を囓るニートになっていただろう。まぁ、ある意味、今もそうだが。

「でね、冬夏にもっと広い世界を見て、自分の道を歩んで欲しいな、と思ったわけ」

母がニッコリ笑う。

「だから、あのセミナーだったの?」

胸がジンとする。

「そう、一石二鳥でしょう。勝利君とも出会えるし、『富豪への道』セミナーなんて、夢があるじゃない?」

ということは、知っていたのか、あの胡散臭いセミナーの正式名を!
一気にジンは消え失せる。
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