私、今日からお金持ち目指します？

「エッ、じゃあ、僕も」と芦屋君が言うと、「俺も行こうかな」と木佐社長まで……。あれ？

「木佐、お前がなぜここにいるのだ？」

私の疑問を上条勝利が問う。
木佐社長はニヤリと笑い、「様子伺い？」と私を見る。なぜ！

「暇なのか？」

上条勝利が呆れ顔で言うと、「まさか」と木佐社長は肩を竦める。

「お前が興味を持った彼女に興味があってね」
「だから観察に来たと……。やっぱり暇なんじゃないか！」
「あのぉ、今、八名で予約を入れました」

山下さんの発言に、「仕事が早い。いいね！」と上条勝利が親指を上げ言う。
褒められた山下さんは……無茶苦茶嬉しそうだ。

上条勝利が「意中の女性がいます」と宣言してから、山下さんの態度がコロッと変わった。すっかり彼に毒されてしまったようだ。

「店は？」と木佐社長が問う。

「ここからすぐの、リストランテ・ボーノボーノです」
「あら、あそこのアランチーニが美味しのよね」
「アクアパッツァも最高よ」

怜華嬢と美麗嬢がキャッキャッとはしゃぐ。どうやら店を知っているようだ。こういうキャピキャピした姿は普通に大学生だ。

「下条さんと三人で気軽に食事をしようと思っていたけど……何だか凄く大袈裟な会食になっちゃったなぁ」

山下さんがポリポリと頬を掻く。
ウンと日下部さんも戸惑いながら頷く。