私、今日からお金持ち目指します?
「何か話があったから食事に誘ったんじゃない?」

私たち三人は肩を並べ、五人の後ろ姿を見ながら後に続く。

「ええ、そうなんです。上条さんの『落とします』宣言のことを両親に話したら、ようやく諦めてくれたの」

日下部さんが嬉しそうに話し出す。
それは良かった。あの男も使えるじゃないか! と何様な発言を心の中で呟く。

「でも、まだ、山下さんのことは認めてもらえなくて……」

途端に顔が曇る。
金持ちも色々大変だな、と思っていると……突然、上条勝利が振り向き言う。

「それは利用価値がないと思っているからだ」

ウワッと三人同時に一歩後退する。
本当に心臓に悪い男だ、とドキドキする胸を押さえる。

「利用価値ですか……」

だが、日下部さんは驚きより、上条勝利の言葉の方に意識がいっているようだ。

「しょせん俺はしがないフリーのプログラマーです」
「だから価値が無いとでも言いたいのかい?」

上条勝利の言葉に、「そうです」と山下さんが唇を噛む。

「その言葉は聞き捨てならないな!」

上条勝利がおもむろに言う。
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