私、今日からお金持ち目指します？

一回目 あなたの夢は何ですか？

現在、店は家族のみで運営しているが、先々代の頃は、家族、及び、従業員が三十人ほどいたらしい。曾祖父は相当なやり手だったようだ。

その才が、父に隔世遺伝していたら、と思うが……残念だ。

普段、厨房には父と母が入る。こう見えても、父はヨーロッパで修行を積んだパティシエだ。腕だけはいい。

母もちょうど同時期、製菓学校に留学していて、二人の出会いの場はそこで、だったらしい。

父は母のことを『ローマの休日のオードリー・ヘップバーンが現れたかと思った』と言い、母は『モナコ王国のステファノ・カシラギ氏かと思った』と言い、お互い一目惚れだったようだ。

『……そして、二人は結婚しましたとさ』と小学四年頃まで寝物語に、両親の恋物語を何度も聞かされた。

ちなみに、ステファノ・カシラギ氏とは、知る人ぞ知る、今は亡きモナコ王国王妃グレースケリーの、超美し過ぎる孫たちの父親で、パソコンで写真を見たが、相当のイケメンだった。

父と母も娘の欲目で言えば、かなりイケているとは思うが、オードリー・ヘップバーンとステファノ・カシラギ氏は言い過ぎだ。二人に失礼だ。

だが、それより何より、本当、親の恋話などウザイだけだった。