私、今日からお金持ち目指します?
「富豪たちは多忙だと言ったことを? 彼らへのアプローチは四六時中ある。君たちから見れば、遊びとしか思えない会食やパーティーへの参加も、富豪には仕事の一環だ」

「羨ましい!」

怜華嬢と美麗嬢が、祈りのポーズでウルウルと瞳を潤ませ熱い溜息を吐く。

「確かに、見ている分には羨ましい世界だろう。だが、煌びやかな世界も、ひとたび中に入ると、どれだけ過酷か」

「過酷? パーティーが? 会食が? 結構楽しいですよ」

芦屋君はそれらを幾度も経験しているのだろう。あっさりと言う。

「ああ、楽しいよ。だが、君の想像を絶する数を熟さないといけないとしたら? そんな悠長なことは言っていられないだろうね」

「具体的におっしゃっていただけますか?」と巴女史の言葉に上条勝利は、「そうだなぁ」と少し考え、「例えば……毎日がこんな分厚い」と、五百頁ほどの書籍を鞄から出し、差し出し見せる。

「ステーキばかりだったらどう思う?」
「それは嫌かな」
「十代の芦屋君でさえ、そう思うだろう。それと同じことだ」

益々分からない。
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