君の思いに届くまで
「あなた、ひょっとしてミネギシ先生知ってるの?」
その女学生は私の顔をのぞき込むようにして続けた。
「そんなに知らないわ。以前このロンドンで、少しだけ話したことがあって。懐かしくなってここに来ただけ」
正直に話したなくて嘘をつく。
女学生は「ふぅん」と相づちを打ちながら自分の腕時計に目をやった。
「あら、もう行かなくちゃ。今から日本文学の授業なの。あなたも一緒にどう?」
今から?
琉の授業?
気がついたら、女学生は私の腕をひっつかんで校舎の方へ走って行った。
胸の奥がドクンドクン脈を打っている。
嘘でしょ?
どうしてこんな展開になっちゃうの?
一番手前の校舎に入ると、その一室の前で女学生は私の顔を振り返る。
「さあ、ここよ。入って」
そう言うと、その扉をガラガラと開け始めた。
「あ、私」
もう少しで全ての扉が開こうとしたとき、反射的にその場から逃げ出した。
どうして逃げなくちゃならないのかわからないけど、無我夢中の走っていた。
体中が熱い。
完全に校舎から抜けきると、持って来たミネラルウォーターをぐいっと飲んだ。
息が荒くなる。
極度の緊張と全速力で走ったせいだ。
私、何やってるんだろう。
もう一口水を飲むと、リュックに直した。
「帰ろう」
私は校舎を振り返らずに元来た道を早足で進んだ。
マミィの待つ家に、早く帰らなくちゃ。
遅くなったら迷惑かけちゃうわ。
ロンドン駅はすぐ近くに見えていた。
こんなに近かったっけ。
その女学生は私の顔をのぞき込むようにして続けた。
「そんなに知らないわ。以前このロンドンで、少しだけ話したことがあって。懐かしくなってここに来ただけ」
正直に話したなくて嘘をつく。
女学生は「ふぅん」と相づちを打ちながら自分の腕時計に目をやった。
「あら、もう行かなくちゃ。今から日本文学の授業なの。あなたも一緒にどう?」
今から?
琉の授業?
気がついたら、女学生は私の腕をひっつかんで校舎の方へ走って行った。
胸の奥がドクンドクン脈を打っている。
嘘でしょ?
どうしてこんな展開になっちゃうの?
一番手前の校舎に入ると、その一室の前で女学生は私の顔を振り返る。
「さあ、ここよ。入って」
そう言うと、その扉をガラガラと開け始めた。
「あ、私」
もう少しで全ての扉が開こうとしたとき、反射的にその場から逃げ出した。
どうして逃げなくちゃならないのかわからないけど、無我夢中の走っていた。
体中が熱い。
完全に校舎から抜けきると、持って来たミネラルウォーターをぐいっと飲んだ。
息が荒くなる。
極度の緊張と全速力で走ったせいだ。
私、何やってるんだろう。
もう一口水を飲むと、リュックに直した。
「帰ろう」
私は校舎を振り返らずに元来た道を早足で進んだ。
マミィの待つ家に、早く帰らなくちゃ。
遅くなったら迷惑かけちゃうわ。
ロンドン駅はすぐ近くに見えていた。
こんなに近かったっけ。