君の思いに届くまで
動物園の中に小さな遊園地があり、そのベンチに座って今朝買って来たパンを食べる。

「日本のお総菜パンは本当に充実していておいしいね」

琉は嬉しそうに食べた。

「そうなんですか?イギリスこそ麦大国でパンはおいしいと思いましたけど」

「普通のパンはあるけど、こういった凝ったパンはないよ。日本の繊細な心遣いから生まれたのがお総菜パンだと思うな」

そういえば、留学していた時、こういったお総菜系のパンはなかったような気がする。

「その代わり、ジャムは充実してますよね」

「うん。そうだね。ジャムの種類や味は日本にも負けていない」

そう言いながら琉が食べているのがジャムパンだったりする。

思わず、ジャムパンを指刺して笑った。

「え?」

そんな私をきょとんとした目で見た。

「だって、そう言いながらも日本でもジャムパン選ぶんだって思って。どうですか?日本のジャムパンの味は」

「意地悪だなぁ」

琉はそう言って前髪を掻き上げながら苦笑した。

そんなちょっと困った顔も好き。

あの時からずっと。

親子連れが私達の食べている前を楽しげに通り過ぎて行く。

暖かい日差しが降り注ぐベンチで、二人並んでパンを食べて笑ってる。

これ以上、幸せをのぞんだら罰が当たるんじゃないかしら。






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