君の思いに届くまで
琉、と発する声もしだいにかすれ、力ない声になっていく。

こんなにも寂しくて不安なのに、今はもう泣く力さえ残っていなかった。

もう一度、会いたかった。

もう一度その胸に抱きしめてほしかった。

どうして、ちゃんと言葉にして伝えられなかったんだろう。

こんな風になっちゃうってわかってたら、きっともっと早く琉の腕の中に飛び込んでいけたのに。

神様は、いつまで私の事許してくれないの?

琉も私も、もう十分に罰を受けたはずなのに。

目の前がふっと白くなる。

まるであの庭で包まれた霧のように。

だけど、真っ暗な森で彷徨っているよりもましなような気がした。

意識が遠のいていく感覚。

体がふわっと宙に浮いてドン!という大きな音とともに、私の魂も消えてしまった。


遠くで琉の声が聞こえる。

何か叫んでる。

「ヨウ!」

私の名前?

「ヨウ!」

その声は次第に私の近くで響いている。

「琉」

その名前を呼んでみるけれど、それは声にはならなかった。

だけど、琉の声が聞こえた途端、私の苦しみがふっと軽くなったような気がした。

私って本当に単純。

そして、私はまた霧の中へ引き込まれていった。
< 124 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop