君の思いに届くまで
私が感じていたことを琉もまた感じていたんだ。

「だけど、森でヨウを探していた時、それは違うってはっきり気付いた。俺の記憶が君の思い出としっかり重なったことを告げないまま、もしこのままヨウが俺の前からいなくなったら、それは記憶の苦しみ以上に二人を苦しめることになるってことに」

「・・・Life isn't about waiting for the storm to pass.It's about learning to DANCE in the rain.」

私はそっとつぶやいた。

「例えどんな苦しい状況だったとしても、二人で手を取り合っていれば大丈夫だ。何も恐くない」

琉は、頷きながらようやく表情を和らげた。

「俺は、間違いなくヨウを愛してるから」

琉の瞳は5年前、私を愛してくれた時と同じ優しくて甘くて熱い目をしていた。

追いついてくれたんだね。

私の琉への思いまで。

色んなことが思い出される。

琉と再会してから今日までのこと。

新しい思い出も全てが今は愛おしかった。

私は琉の熱い手を僅かに握り返し、夢かもしれないこの幸せな気持ちのまま目をつむった。

心の中で「ありがとう」と呟きながら。

私の回りにあった霧が晴れていく。

見えなかったものが少しずつ鮮明に現れていく。

それは、今まで自分自身も気付いていなかった、愚かな世界と共存しながら愛する人と生きていく世界。

病室の窓からやわらかい風が私と琉の間を吹き抜けた。



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