君の思いに届くまで
こういう時、女友達ではなく気の置けない男友達と飲みたくなる。

女同士よりも気を遣わないで思いのまましゃべれるから。

そんな時いつも私の話を聞いてくれるのが間宮健だ。

大学で入っていたバスケ部の同期。

健は経済学部で、卒業後は大手商社の光山商事に入社して今や営業部トップの成績を誇るバリバリの営業マンだ。

最近は忙しくてなかなか飲みにも行っていなかったから、今夜いきなり飲みに誘ったところでどうなんだろう。

無理なら一人で軽く飲んで帰ろうと思っていた。

今の時間だったら丁度お昼休みだろうか?思い切って健の携帯に電話をかける。

案の定、電話には出ない。

LINEに『今晩空いてる?』とだけ送っておいた。

期待せずにスマホをバッグに仕舞おうとしたら、スマホがふるえた。

慌てて見ると、健からの返信だった。

『19時過ぎになっちゃうけどいい?』

『オッケーだよ。いつものお店でいい?』

『了解。突然だけど男にでも振られたか?』

『まぁそんなとこかな』

『ゆっくり聞いてやるよ。気の済むまでどうぞ』

健にはいつも何でも話せた。

どんなに不細工な顔で泣きながら話したって「はいはい」って私にハンカチを手渡しながら嫌な顔一つしないで。

男だけど、私にとっては親友と呼べる相手だった。

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