君の思いに届くまで
マミィは、彼に私のことを紹介してくれた。
「初めまして。峰岸琉です」
琉は私に右手を差し出した。
その右手に戸惑いながらも、その大きくて繊細そうな手を握り返す。
「はじめまして。瑞波ヨウです」
マミィは琉の手を握っている私にウィンクすると、「あとはお二人でゆっくりと」なんて自分はさっさと向こうにいる自分の友人達の方へ行ってしまった。
急に2人きりになって今までマミィのいた和やかな空間が変わる。
琉に握られている手が熱い。
急に恥ずかしくなってその手を自分からそっとほどいた。
琉は、そんな緊張する私を優しく微笑んで見つめながら、
「こんな素敵なクルーズ夫妻の元によくホームスティできたね」
と穏やかな声で言った。
「クルーズ夫妻は、今大学で秘書している教授の紹介なんです」
「そうか。それはとてもラッキーだったね」
琉は私よりずっと年上のような落ち着きがあった。
それにイギリスでずっと住んでいる彼はちょっとした物腰もとても柔らかく、紳士的。
日本でこんな男性に遭遇したことがない私にとって琉の初対面はとても新鮮で全ての所作にドキドキしていた。
「あちらのベンチで座ってゆっくり話そうか」
そう言うと、ゆったりとした足取りで庭にある白い花を咲かせたリンゴの木の下のベンチに向かった。
ベンチに座ると、琉のきれいな横顔があまりにも近くて思わず前を向いてうつむいた。
「ヨウは、語学留学でこちらに来たんだってね」
いきなり「ヨウ」なんて名前で呼ばれて顔が熱くなる。
「は、はい」
膝の上に置いた両手をぎゅっと握り締めた。
「峰岸さんは、こちらには長いんですか?」
そう尋ねながら、ゆっくりと目線だけ琉の顔に向けた。
涼やかな目元が笑っている。
「峰岸さんじゃなくて、琉でいいよ」
「いや、でも、私よりずっと年上みたいだし」
「俺?いくつに見えてる?」
「え」
こういうときはサバ読んで若く言うべきなんだろうか。
でもサバ読むのは女性の年齢の時だけで、男性は逆に年上に見える方が嬉しかったりするのかな。
琉の涼しげな目元を見つめながら考える。
すると、琉が額に手を当てて吹き出した。
「ごめん、意地悪な質問だったよね。そんなマジな顔して考え込まれちゃ逆に申し訳ない気持ちになるよ」
そんな笑いながら言われても本当に申し訳なく思ってるんだか。
笑ってる琉を横目に憮然と座っていた。
「ごめんごめん。笑いすぎた。俺は今30歳だ。ヨウの予想通りだった?」
前髪を掻き上げた琉は笑っていたせいか少し頬が紅潮していた。
30歳なんだ。
私より7歳年上の琉は、雰囲気が落ち着いているせいか私にはもう少し年上に感じた。
「いずれにせよ、イギリスじゃ親しくしたい相手とは下の名前で呼び会うのが普通だから気にしないで呼んでくれていいよ」
私に顔を向けて話すその薄茶色の瞳に吸い込まれそうになる。
「それにしても、このヨークで日本人と出会えるなんて思いもしなかった。しかも、こんなにチャーミングな女性と」
意識が遠のいていくくらい、心臓がバクバクし始めていた。
私?
チャーミング?
そんなこと、今まで男の人に言われたことなかった。
これまでおしゃれにも興味なくて、1年中TシャツとGパンだったし、髪も面倒臭くてショートボブより長くしたことがなかった。
もちろんお化粧だって、薄くおしろいはたいて、口紅を塗るくらいだ。
そんな私がチャーミング??
大学時代からの男友達、間宮健が聞いたら間違いなく大笑いするだろう。
きっとこの琉って人は、普段イギリスのきれいな女性に囲まれていて、こんなへちゃむくれをチャーミングだなんて思うほどに感覚が鈍ってるにちがいない。
「初めまして。峰岸琉です」
琉は私に右手を差し出した。
その右手に戸惑いながらも、その大きくて繊細そうな手を握り返す。
「はじめまして。瑞波ヨウです」
マミィは琉の手を握っている私にウィンクすると、「あとはお二人でゆっくりと」なんて自分はさっさと向こうにいる自分の友人達の方へ行ってしまった。
急に2人きりになって今までマミィのいた和やかな空間が変わる。
琉に握られている手が熱い。
急に恥ずかしくなってその手を自分からそっとほどいた。
琉は、そんな緊張する私を優しく微笑んで見つめながら、
「こんな素敵なクルーズ夫妻の元によくホームスティできたね」
と穏やかな声で言った。
「クルーズ夫妻は、今大学で秘書している教授の紹介なんです」
「そうか。それはとてもラッキーだったね」
琉は私よりずっと年上のような落ち着きがあった。
それにイギリスでずっと住んでいる彼はちょっとした物腰もとても柔らかく、紳士的。
日本でこんな男性に遭遇したことがない私にとって琉の初対面はとても新鮮で全ての所作にドキドキしていた。
「あちらのベンチで座ってゆっくり話そうか」
そう言うと、ゆったりとした足取りで庭にある白い花を咲かせたリンゴの木の下のベンチに向かった。
ベンチに座ると、琉のきれいな横顔があまりにも近くて思わず前を向いてうつむいた。
「ヨウは、語学留学でこちらに来たんだってね」
いきなり「ヨウ」なんて名前で呼ばれて顔が熱くなる。
「は、はい」
膝の上に置いた両手をぎゅっと握り締めた。
「峰岸さんは、こちらには長いんですか?」
そう尋ねながら、ゆっくりと目線だけ琉の顔に向けた。
涼やかな目元が笑っている。
「峰岸さんじゃなくて、琉でいいよ」
「いや、でも、私よりずっと年上みたいだし」
「俺?いくつに見えてる?」
「え」
こういうときはサバ読んで若く言うべきなんだろうか。
でもサバ読むのは女性の年齢の時だけで、男性は逆に年上に見える方が嬉しかったりするのかな。
琉の涼しげな目元を見つめながら考える。
すると、琉が額に手を当てて吹き出した。
「ごめん、意地悪な質問だったよね。そんなマジな顔して考え込まれちゃ逆に申し訳ない気持ちになるよ」
そんな笑いながら言われても本当に申し訳なく思ってるんだか。
笑ってる琉を横目に憮然と座っていた。
「ごめんごめん。笑いすぎた。俺は今30歳だ。ヨウの予想通りだった?」
前髪を掻き上げた琉は笑っていたせいか少し頬が紅潮していた。
30歳なんだ。
私より7歳年上の琉は、雰囲気が落ち着いているせいか私にはもう少し年上に感じた。
「いずれにせよ、イギリスじゃ親しくしたい相手とは下の名前で呼び会うのが普通だから気にしないで呼んでくれていいよ」
私に顔を向けて話すその薄茶色の瞳に吸い込まれそうになる。
「それにしても、このヨークで日本人と出会えるなんて思いもしなかった。しかも、こんなにチャーミングな女性と」
意識が遠のいていくくらい、心臓がバクバクし始めていた。
私?
チャーミング?
そんなこと、今まで男の人に言われたことなかった。
これまでおしゃれにも興味なくて、1年中TシャツとGパンだったし、髪も面倒臭くてショートボブより長くしたことがなかった。
もちろんお化粧だって、薄くおしろいはたいて、口紅を塗るくらいだ。
そんな私がチャーミング??
大学時代からの男友達、間宮健が聞いたら間違いなく大笑いするだろう。
きっとこの琉って人は、普段イギリスのきれいな女性に囲まれていて、こんなへちゃむくれをチャーミングだなんて思うほどに感覚が鈍ってるにちがいない。