君の思いに届くまで
「ヨウの言ってる追いつく追いつかないの意味は俺には分からないけど、それは俺達の関係にとってそんなに重要なことなのか?」

重要?

2人の関係にとって重要なことのかと聞かれたら、今はまだ重要かどうかはわからなかった。

ただ、訳もなく不安になっているこの気持ちをどう表現すればいいかわからない。

「ん、もういいです」

面倒臭くなってそう答えていた。

琉はグラスをベッドのサイドテーブルに置くと、私の横に体を寄せてきた。

「いつかは届くよ。俺が拒まない限り」

そして、私の肩にキスをする。

「拒む可能性はあるの?」

優しく私の体に触れる琉の唇に、少しずつ自分の理性が薄れていくのを感じながら尋ねた。

「俺がヨウとの記憶を刻んでいる限り拒まないよ」

「私の記憶、絶対消さないでね」

「消せるわけないじゃないか」

琉は私の体を痛いくらいに抱きしめた。

「例え、会えなくなってしまったとしても、俺の心にはずっとヨウがいる」

私は琉の鎖骨に自分の唇を当てた。

「少し時間がかかるかもしれないけれど、絶対ヨウを迎えにいくから。それまで待っててほしい」

その言葉は、まるでプロポーズみたいだと思いながら夢見心地で聞いていた。

「いつまでも待ってる」

私は琉の体温を感じながら、目をつむった。

琉の深いキスと熱い抱擁を繰り返し受け入れながら、私も絶対琉との記憶を消さないって誓っていた。

いつの間にか窓の外には月が出ていた。

暗闇にふと不安を感じて、琉の手をしっかり握った。

前日寝ていなかったせいか、その手に安堵して急に睡魔に襲われる。

そのまま琉の手の温もりを感じながらいつの間にか私は深い眠りに落ちていった。

まるで生まれたばかりの赤ちゃんみたいに。
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