君の思いに届くまで
イギリスの留学を終え、日本に帰ってきてからの私はしばらく放心状態だった。

友達が皆心配してくれる。

「何があったの?」って。

だけど言えなかった。

っていうか言いたくなかった。

琉と二人だけの思い出は、二人だけにしておきたかったから。

それに、私が犯した罪は誰かに話したところで許される訳でもなかった。

あの後、琉とフィアンセはどうなったんだろう。

ずっと気になっていた。

失明してしまったフィアンセと琉は結婚するんだろうか?

琉ならそうするだろうって思った。

だから、私はもう二度と琉とは会えない。

例え偶然出会ったとしても、全く知らない者同士として会わなければならない。

だって、少しでも気持ちが緩んだら、琉のそばに駆け寄って抱きしめてしまいそうだから。

そんな私を心配した友人が、素敵な恋人でもできたら元気になるかもしれないって、色んな合コンを企画したり、それなりの男性を連れてきては紹介してくれたりした。

だけど、琉以上の相手なんか見つかるわけかなかった。

誰かを好きになれたらこんなに楽なことはないのに。

私の心の奥底にはいつも琉の姿があった。

そして、琉を求め続けていた。

我ながらバカだと思いながら。




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