君の思いに届くまで
食事が終わると、琉はリビング奥の部屋に私を案内した。

そこはゲストルーム用の部屋で、シングルベッドと小さな机と椅子、ポールハンガーが置いてある。

この部屋は私が好きに使っていいとの事だった。

琉にとっては当たり前だけど、琉と寝る部屋が別々だったことに少し寂しい気がする。

だけど、こうして琉が私と過ごす時間を求めてくれているだけで一歩あの頃の私達に近づいているんじゃないかって嬉しくもある。

急がなくてもいいよね。

今はこんな近くに琉がいるんだから。

「明日は日曜で休みだからどこかへ行こうか」

琉は私のグラスにワインを注ぎながら言った。

「峰岸教授がよろしければ喜んで」

ボルドーの赤ワインが微かな泡を弾きながらトクトクと柔らかい音を奏でる。

「俺は正直日本の地域事情には詳しくないから、ヨウのおすすめの場所があれば教えてくれないか」

グラスを揺らしながらおすすめの場所か、と考える。

「峰岸教授はどんな場所に行きたいですか?ショッピング、観光名所、公園、動物園、水族館……」

具体的に提案してもらう方がよかったので尋ねる。

琉はワインを一口飲み、こめかみに指を当てながらしばらく考えていた。

「日本の動物園はなかなか工夫されていて楽しいところだと友人から聞いたことがある」

「動物園ですか?」

琉からは意外な返事だったけど、私は一緒に行けたら楽しいだろうなと思っていた場所だった。
< 94 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop