sweet sweet Valentine!!
だからか今日を楽しみに来訪されるお客様が怯えてしょうがない。
「あ、我慢の限界が来たみたいよ」
そう笑った先にはカツカツと革靴を無駄に鳴らして受付に近づくとバンッ!とカウンターに手をつく苛立つ男。
「…花音。何考えてんだよ、俺以外の男にんなもん渡すな!」
そんなもんってあんた…。
貴方の会社の製品で、貴方のお爺様が発案のイベントですが。
「……俺だってまだ貰ってねぇのに」
ポツリと溢れた本音に目が丸くなる。
欲しかったのか。
なんだよ、可愛いじゃないか。
項垂れた頭にそっと近づこうと腰を上げて耳元に顔を寄せた。
「本命は手作りだから我慢してね」
離れる寸前「夜、部屋で待ってるから早く帰って来てね」そう駄目押しに囁けば彼が目を見開いた。
それでもまだ納得いかなさそうな彼を仕事だからとあしらって仕事に戻す。
仕事にヤキモチ焼かれても。
しかしここで彼を宥めなければ確実に来年からこのイベントは消えるであろう。
やれやれ。
隣で爆笑している先輩に、後日寿退社の報告をすることになったのは又別の話。