セルロイド・ラヴァ‘S
「保科さんは彼女のどこが好きなんです?」
羽鳥さんの指に挟まれた煙草から白い煙が音もなく立ち昇ってく。仕事の時に見せる獲物を捕らえる前のような、“戦闘準備”モードの表情を覗かせて彼は躊躇いもなく問う。
愁一さんは質問が突飛だったにも関わらず、そうだね、と穏やかな口調を崩さなかった。それは私も知りたかった答え。固唾を飲む。
「お互いに一目惚れだから理屈じゃないのかな。彼女さえいれば何も要らないと思うし他に一緒にいたい理由もない。ただそれだけなんだけどね」
淡く笑んで。たったそれだけの言葉なのに。・・・愛してるって言われるより百倍も千倍も嬉しくて切なくて、どうしようも無いなんて。
鼻の奥がつんとして目元に熱を生む。泣きそうになっているのを、愁一さんが伸ばした手であやすみたいに優しく頭を撫でてくれた。
「・・・ごめん、泣かせて」
羽鳥さんの前でみっともなく泣けない。涙を堪えて無理やりの笑顔を作る。
「ううん・・・。変化球待ってたら、かなりストレートでびっくりしただけだから」
すると隣りで羽鳥さんが小さく吹き出す。
「いいな、お前のそのリアクション」
「・・・別にウケを狙ったわけじゃありません」
少し口を尖らせて見せれば、「はいはい」とやっぱりこっちも子供扱い。
「そういう君は睦月のどこが好きなの?」
私と羽鳥さんの間に漂った親し気な空気を、静かに剣を降り降ろしたかのように。愁一さんの柔らかな声が一瞬で払いのけた。
羽鳥さんの指に挟まれた煙草から白い煙が音もなく立ち昇ってく。仕事の時に見せる獲物を捕らえる前のような、“戦闘準備”モードの表情を覗かせて彼は躊躇いもなく問う。
愁一さんは質問が突飛だったにも関わらず、そうだね、と穏やかな口調を崩さなかった。それは私も知りたかった答え。固唾を飲む。
「お互いに一目惚れだから理屈じゃないのかな。彼女さえいれば何も要らないと思うし他に一緒にいたい理由もない。ただそれだけなんだけどね」
淡く笑んで。たったそれだけの言葉なのに。・・・愛してるって言われるより百倍も千倍も嬉しくて切なくて、どうしようも無いなんて。
鼻の奥がつんとして目元に熱を生む。泣きそうになっているのを、愁一さんが伸ばした手であやすみたいに優しく頭を撫でてくれた。
「・・・ごめん、泣かせて」
羽鳥さんの前でみっともなく泣けない。涙を堪えて無理やりの笑顔を作る。
「ううん・・・。変化球待ってたら、かなりストレートでびっくりしただけだから」
すると隣りで羽鳥さんが小さく吹き出す。
「いいな、お前のそのリアクション」
「・・・別にウケを狙ったわけじゃありません」
少し口を尖らせて見せれば、「はいはい」とやっぱりこっちも子供扱い。
「そういう君は睦月のどこが好きなの?」
私と羽鳥さんの間に漂った親し気な空気を、静かに剣を降り降ろしたかのように。愁一さんの柔らかな声が一瞬で払いのけた。