セルロイド・ラヴァ‘S
『君は睦月のどこが好きなの?』

返されたその問いに羽鳥さんは。真顔に戻って灰皿で煙草を揉み消し、背筋を張って愁一さんを見据えた。
 
「少なくとも俺は保科さんより長く彼女を想ってきたつもりです」

淡々と。いつも通りの私が知っている彼のままで。

「確かに俺は会社での彼女しか知りませんでした。でもどんな雑用を頼んでも笑顔で引き受けてくれたり、外から戻ってくれば黙っててもコーヒー入れてくれたり。いつの間にか彼女と接するとほっとするようになった。それがきっかけで、気が付いたら好きになってましたよ」

前も同じようなことを言われたのを思い返す。

「離婚は前から考えてた事でしたし、彼女も俺に好感は持ってくれてましたから。やっときちんと向き合うつもりでいたら、紙一重で保科さんに浚われるとは思ってもみませんでしたが」

流暢に言い終え羽鳥さんが正面を切るまで。愁一さんは一度も目を外さなかった。
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