先生と双子と幼馴染と。
「怒ってんの?」

「別に」

「勘違いしていたみたいだけど、こっちが本当のオレだから」

「強引ってことね」

「そーゆーこと」


私の目の前に座る悪魔は、楽しそうに笑いながら『キャラメルなんとか』っていうすっっごく甘い飲み物を飲んでいた。


「…あ、ゆずから電話だ。怒られるなぁ」


「怒られる」と言う割には口元には笑みが浮かんでいるけど。

彼は一体なにを楽しんでいるの?


「…映画終わった? うん、カフェにいる。早く来ないと…」


和希くんはチラッと私を見てフッと笑った。


「なんでもない。またあとで」


電話を切ったあと、彼は立ち上がって「帰るね」と手を振った。


「ちょっと! なんで!?」

「ゆずと幼馴染くんに怒られるのは嫌だから先に帰るだけ。一緒に行く?」

「行かない!」

「そう言うと思った。じゃあ、またあとでね……あ、そうだ」


何かを思い出したように振り返ると、私の近くにきて そっと囁いた。


「このことはオレたちの秘密ね?」


私は何も言えずに、帰って行く彼を見つめていた。
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