バレンタイン・プレゼント
プロローグ
初めてクッキリ浮かび上がった二本のラインを見たとき、私は「あぁやっぱり」と思った。

やっぱり私、妊娠したんだ・・・。
私が・・・他の誰でもない、この私が。

嘘。信じられない。
なんて言葉が頭の中をよぎったのは、ほんの一瞬だけだった。
だって私は薄々感づいていたから。
検査薬でテストしなくても、私は妊娠してるに違いないと。

妊娠している「事実」を確認した私は、会社へ出かけようと、ノロノロと立ち上がった。
ただでさえ、いつも出勤する時間より遅れてるんだから・・・とその前に、陽性サインが出ているスティックを、ゴミ箱に捨てる。
そのとき私の手が震えていたのは、失望と不安と、それ以上の喜びと、そして幸せ・・とにかく、色々な気持ちがいっぺんに押し寄せて、それがグチャグチャにかき混ぜられた結果からだと思う。

たった一夜の出来事が、私の未来を大きく変えようとしていた―――。

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