バレンタイン・プレゼント
「ほら、俺のことは全然知らないわけでもなく、怪しいヤツでもない。適度に知ってて距離のある間柄、って言えばいいかな。つまり、霧野さんが“こいつになら話しても構わない”と思ったとき、たまたま俺がここにいた。それだけのことだよ」
「あ・・・す、すみません・・・」
「いいって。俺には話してもいいんだよ。俺は誰にもしゃべらないから」
「えっ?いや、私はそういうことを気にしてるんじゃなくて・・」
「分かってるよ。このガタイのせいかなぁ。俺は昔っからそういう聞き役?みたいな立場になることが多くてさ。大学のときは“神父(ファーザー)”と呼ばれてたくらいだ」

如月さんは、私の落ち込んだ気持ちを和ませるために、わざとおどけた口調でそう言ったに違いない。
彼の思惑通り、泣きそうになっていた私は、ついクスッと笑ってしまった。

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