バレンタイン・プレゼント
「俺ん所はペットオーケーだから。ただ、俺は出張で、時々何週間も家を空けることがある。だから一時的にしか預かることはできない。でも心配しなくていい。こいつは両親に世話してもらうから」
「え。で、でもそんな・・ご両親に相談もしないで決めてしまってもいいんですか?」
「いいよ。最近おふくろがさ、“またネコ飼いたい”って言うようになったんだ」

子猫を抱いたまま、「また、ですか?」と聞く私に、如月さんが頷いた。

「昔うち、って実家でネコ飼ってたんだ。長生きしたんだが3年前に亡くなってさ。老衰だったんだが、家族の一員が亡くなったも同然で、おふくろはかなり気落ちしてしまって。“もう二度とペットは飼わない”って言ってたんだが、また生きものの世話をしたい気持ちが強くなって来たんじゃないかな。俺としては嬉しいことだし、たぶんおふくろも、もちろん親父も喜ぶと思う。ちょっと待ってて」と如月さんは言うと、スラックスのポケットからスマホを取り出して、電話をかけはじめた。

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