バレンタイン・プレゼント
「これ、バレンタインのプレゼント」
「あ・・・ありがとぅ、ございます」

差し出されたものを、反射的に手を出してもらった透明のセロファンに包まれた赤い薔薇は、少し長めの茎で、とてもキレイだ。
でも、いきなりそれを「バレンタインのプレゼント」と言われてもらったことに、私は嬉しい以上に戸惑っていた。

「・・・俺、今日誕生日なんだ」
「・・え・・・?」

しかも如月さんから「誕生日なんだ」と言われるとは思ってなかっただけに、ビックリした以上に、なんだか拍子抜けした。
いっぱいいっぱいに張りつめていた私の緊張感が、スルスルと緩んでいくのが自分でも分かる。

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