イジワルな王子様と甘美なる午後
チョコレートと甘美なる午後
「……チョコレート? なに、これ」

誰もが見惚れるような美貌の御曹司・常盤慧は、その端麗な甘いマスクを歪めた。

「えっと、今日はその、バレンタインデーで……っ」

今迄の私にとっては『世界中から集められた珠玉のチョコを買える日』でしかなかった。
それが、突然現れたワケわからない王子様のことを好きになってしまったせいで、ドキドキして、いてもたってもいられなくて。
彼が女性からチョコを貰うのを目撃する度に、苦しくなるなんて。

それならいっそ、自分も想いをチョコに込めてしまえば……! なんて閃いたのがいけなかった。

高級チョコレート店の箱を受け取った彼は「ふぅん?」と呟くと、興味なさげに手の中で箱を弄ぶ。――どうやら私の初恋は、ビターな結末を迎えたらしい。

「ああ、わかった。君さ……」

王子様然とした彼は魅惑的な表情を浮かべる。
私の耳元へ顔を寄せると、甘く低い声音で囁いた。

「もしかして――本気で僕のことが好きになっちゃった、とか?」
「……っ!!」

興味がないなら、気がつかないでくれたら良かったのに。
こんな時に本心をバラされて、頬が熱くなった。
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