ぶっ壊れるほど愛してる
あたしと貝塚くんが出会ったのは入社してから一年経った頃。
貝塚くんは白百合蓮と同じ営業部で、あたしと同い年だった。
あたしは事務だから部署が違ったんだけど、営業部の報告書を事務に持ってきたのが貝塚くんだった。
その日あたし1人しか残業してる人が居なくて、貝塚くんが持ってきた報告書をあたしが受け取ったところが出会いかな確か。
最初は人の良さそうな好青年って感じで笑うと目が細くなって、あーこの人女の子にモテそうって思った気がする。
そこから通勤の電車が一緒だったり、住んでる家がお向かいだったりで話す機会も多くなり付き合うのにそんなに時間はかからなかった。
どちらならともなく自然と付き合うみたいになってお互い付き合おうとか言葉も無くて、でもそれが大人の付き合い方かなとか思ってた気がする。
貝塚くんは優しくて常に笑顔で、穏やかな時間が流れてたんだけど…。
「浮気されたのか」
思い出を噛み締めるように話してたら邪魔が入った。
「いや、まだ話してる途中だから黙って聞けよ」
「まあいい、続けろ」
いや、お前が割り込んできたんだろがよ。
まあそんなこんなで昨日貝塚くんと夜ご飯食べる約束してたんだけど。
貝塚くんの家に行ったら、家の前で貝塚くんと女の人が抱きしめ合っていて。
そこで知らないふりすればよかったあたしが、何してんの?って声掛けたら、
貝塚くんがいつもの笑顔でごめんねって謝ってきた。
何に対してのゴメンなのか、よくわかんなかったけどとりあえずなんかいけないもんでも見てしまった気になったあたしはそこから踵を返してお向かいの自分の家に帰って行った。