くるみさんの不運な一日
上から落ちてくるのは、腕の力とは全く真逆の、柔らかく優しい声。


この、あたしからすれば緊迫(きんぱく)した状況には、似つかわしくない穏やかな声。


「あんた、何言ってんの!? 彼女に悪いから離して!」

「うん。彼女いないから」

「はあ!? 何言ってんの!?」

「うん。女いるっての嘘だから」

「はあ!? 何言ってんの!? そんな事で騙されないし! 今の電話も彼女でしょ!」

「いや、友達。今日飲む約束してたの忘れててしつこく掛かってきてるだけ」

「騙されないって言ってんの! あんな声出してたくせに!」

「あんな声?」
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