くるみさんの不運な一日
「ん? 何?」

数メートル向こうの雪崩――書類から、ひょっこり顔を出した天川智明。


「新しい名刺だって!」

そんな天川に声を掛けた男の人が、あたしを指差し伝えてくれるけど――。


見た。


見てしまった。


あたしを見た時の天川智明のその表情をしっかりと見てしまった。


「げっ」って顔。


「何でお前が!?」って顔。


「面倒臭ぇ事言いに来たんじゃねぇだろうな」って顔。


あからさまな、「ウザい」って顔。


一瞬だったけどしっかり見た。


見えた。
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