くるみさんの不運な一日
あたしが一体どんな気持ちで今ここに立ってるのかさえ、1ミクロンも分からないくせに、天川智明は涼しい顔で、渡したお金を返してくる。


そんなものいらない。


お金なんていらない。


散々侮辱された挙句に、お金を返して欲しくなんてない。


だけど余りの怒りから、何も出来なくなってた。


ほんの少しでも動いたら、何かが壊れてしまう気がした。


たった一言でも発したら、悔しくて泣いちゃう気がした。


こんな男の前で泣きたくないと思う。


ギリギリのプライドがそう思わせる。


泣いて勘違いされたくもないし、「ウザい」って顔されたくもない。
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