イミテーションラブ
「今日はこの資料の入力と、ファイリング。電話応対は課のメンバーと取引先の名前を覚えてから応対するように」
「はい」
パソコンの画面を見ながら、隣で指示をする広瀬さんの顔をもう一度盗み見た。
…やっぱり彼だ
偶然とはいえ運命的なものを感じた。

でも広瀬さんは全く気付いていない。

しょうがないと自分に言い聞かせた。
たまたま就職した先に彼がいただけのこと。
バイト先だったカフェの場所と職場は、距離的に近いから偶然会う事もあるのかもしれない。

でも同じ職場で出会うなんて、運命だとか、出会うべき人だったとか自分に都合よく考えてしまう。

「質問ある?」
「いえ…」
「じゃあ、終わったところでまた次の指示を出すから聞きに来て」
「はい」
広瀬さんは淡々と話すと、自分の仕事へと戻っていった。

意識したせいか顔が熱くなってしまう。

広瀬隆文さん。

これからここで働くことに、彼と一緒に働けることに、素敵な未来を想像してしまった。
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