イミテーションラブ
1ヶ月も過ぎて仕事に慣れるようになると、職場の人達の性格や行動も段々と分かるようになってきた。
一つ年上の田中英里奈先輩とは特に仲良くなってランチを一緒に食べている。
「ねえお腹すいたー、智花今日は蕎麦でいい?」
「いいですね、私、温かいのにしようかな〜」
「じゃあザル蕎麦!あそこの店美味しいのよね」
「ですね〜私またそこの店行きたかったんです」
「混むから、12時になったらすぐ行くよ!」
「はい了解です」
もうすぐ昼休憩に入るからか、お腹が空いてきて、グゥーとお腹の音が鳴ってしまった。
「何、蕎麦屋?俺も同席しようかな」
後ろから声が聞こえて振り向くと、隣の課で同期の田崎涼介が私達の話に割り込んで来た。
「あ、一緒にいく?」
この田崎涼介って人は、入社した時から馴れ馴れしい奴で、けっこう図々しいところがある。
「ソバ、ソバ、言うから食いたくなってさ〜しかもここまで城山ちゃんのお腹の音が聞こえてくるから煩くて…昼まであと5分だからもう少し我慢しろなー」
ニヤニヤしながら私をからかうように茶化す。
そんな音なんて無視してくれていいのに、わざわざ皆んなの前で言わないでって思う。
睨みつけるように奴を見ると、向こうも私の反応を面白がってニヤリと笑う。
絶対一緒に行きたくないタイプ。
女子だけがいい!
「すみませんけど田崎さんも一緒だと他の部署の女性陣から嫉妬の目で見られちゃうから遠慮してくれません〜?」
私はきっぱりそう言ってやった。
田崎涼介は調子がいい性格と、人当たりの良さからか、かなり女性に人気があるらしい。
まあ確かに身長が高いし、モデルといってもおかしくないモテる顔もしていると思う。…この性格は頂けないけど。
「はあ?俺たちの仲良いとこ見せつければいいじゃん」
そう言って肩に腕を回してもたれかかる。
腕…重いから!
「そんなの同じ部署の人達と交流してよ」
ツンと冷たい態度で返す。
「なんだよ同期の仲を深めるだけだろ?」
「え〜それ、いらないから」
キッパリ撥ね付ける。
「俺にも蕎麦食わせろ!」
回された腕にグッと力が入る。
うっ!この扱い酷くない?
英里奈先輩に助けを求めるも、ニヤニヤ笑ってる
「…ふふ、蕎麦が目的じゃなくて智花でしょ?」
意味深な含み笑いで田崎に目配せする。
「違う違うっ、蕎麦好きだから!」
慌てて否定する田崎。
先輩…勘違いだからやめて…
「あ、ほら12時になったよ!行こっ」
話を変えようとこっちも必死だ。
「おう!」
結局3人で仲良く蕎麦屋に行くことになったわけで…他部署なのに一緒にいるから私と田崎涼介が
付き合ってる噂まで広まってるらしい。
どっちかというと天敵なんだけどね。
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