イミテーションラブ
そもそも恋愛のキッカケって、どうしたらいいんだろう。広瀬さんと仕事の会話以外に話す機会がなかなか無くて、雑談なんてそんな雰囲気は全くなかったりする。
「頼んでた資料できた?プリントアウトして20部ずつコピーして」
「は、はい」
「それから、今日は打ち合わせ入ってるから15時から会議室空いてるか調べて」
「はい!」
バタバタと毎日言われた仕事をこなしてるだけで、余裕がない。
広瀬さんは朝の会議、電話やお客様とのやりとり、外出して打ち合わせ、確認のための取引先の訪問、営業的なやり取り等。
日中は忙しく、会社に戻ってからも、私への仕事の指図や資料の確認、業務報告の作成など、休む暇がないのだ。
そんな中で私とゆっくり話す時間はなくて、接点を増やそうにも、二人になれる機会がないから、何も出来なかったりする。
以前バイト先で訪れていたのも、打ち合わせだったりするのかも…
もちろんバリバリと働く姿は仕事が出来る男みたいで、素敵だなって思うけど。
頼まれた会議用の資料をパソコンに入力しながら、横目で広瀬さんの動きを追う。

男性のタイプは皆それぞれだけど、私には広瀬さんが1番素敵に映る。
ただの気になるお客さんだったからじゃなく、今は好きな人に変わりつつある。
私が広瀬さんの事を考えながら仕事をしていると、肩をトントンと軽く叩かれた。
振り向くと英里奈先輩がそこにいて、私にこっそり耳打ちをする。
「ねえ、今週の土曜日の夕方からあいてる?」
「はい、空いてますけど…」
「うちの課で城山さんの歓迎会するからさ、後で店の名前と場所教えるね」
「歓迎会ですか、嬉しい!ありがとうございます!」
「ふふ、特別ゲストも誘ってるよ」
「?」
気になる言い方に疑問が浮かんだけど、私を歓迎してくれるイベントに素直に嬉しく思った。
< 6 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop