仕掛けは会議室で
堕ちてと願いを込めて
午後3時を少し過ぎた頃、

「失礼します」

沙羅は商談中の宮田部長と相手の山本様にお茶出しに向かった。

「へぇ、気が利くね。しかも選択肢がいいね。うちにもキミのような娘(こ)がいたらなぁ」

山本の言葉に宮田は覗いていたPCから顔をあげた。

茶托に乗せられた湯飲みと茶菓子。別に山本の為ではない。渋い顔をして山本にわからないように睨み付ける宮田のせいでこうなっただけ。

「有り難うございます。お口に合うと宜しいのですが。失礼します」

手短に挨拶し、退室した。

それから約2時間後、山本が帰ると同時に宮田から呼び出された。

「片付けしておいて」

書類を手にしたまま、入室した私に目もくれずに呟くのはいつものことだ。

返事をして机上を見て、伸ばしていた手がふいに止まった。

(宮田に出した茶菓子がなくなっている!)
(食べてある!)
(う、嬉しい!!!!)

心臓がドキンドキンと忙しなく動く。

「うちはバレンタイン禁止だった筈だが?」

書類を下げた宮田が眼鏡越しに小躍りしそうな私を睨みつけてきた。

「すみません。ですが、部長は社外でも受け取ってくれないし」
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