いつも貴方は側にいて…

政治家のパーティに出席しても、神崎と一緒ならば心強かった。会社を背負う専務としてどんなふうに振る舞えばいいのか、神崎がすべて教えてくれる。

「ありがとう」

葵がそう言っても、神崎は微かに目を伏せるだけ。彼の感情は、そこから読み取れない。ましてや、葵のことをどう思っているのかなんて…。

きっと神崎にとっての葵は、ただの上司。葵が想いを打ち明けても、部下の神崎は断るに断れない。何よりも、職務に徹している神崎には、仕事以外の話をする隙がなかった。

それが、葵が一歩を踏み出せない理由。去年もこんな風に、勇気を出せないままだった。

「今日は、これで帰れるの?」

パーティが終わって、神崎に確認する。今年もこのまま、バレンタインデーが終わってしまいそうだ。

「いえ、ご予定が一つ残っています」

神崎にそう言われて、会社の専務室へ帰ってきても、葵には心当たりがない。
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