素直になれない、金曜日
(2):

透明色の夕焼け

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「不審者だってさー。物騒だね」



委員長の先輩がさっき一斉にピコン、と通知音を響かせたケータイをちらりと確認して言った。


たぶん、学校からの一斉送信メール。


不審者というワードに、その場の空気がぴりっと緊張感を持った。




「最近物騒な事件多いもんね〜、怖いなあ」

「いつ自分が被害者になってもおかしくないからなー」



女の先輩達が口々に話す。




今は放課後。

月にだいたい2回程度行われる図書委員の定例会の真っ最中。


定例会と言っても、蓋を開けてみればほとんどお喋り会なのだけれども。



図書委員のメンバーは先輩も含め気さくで面白い人が多くて、話を聞いているだけでいつも楽しい気分になるんだ。




「んー、とりあえず今日は女子は一人で帰るの禁止な? 危ないから」



委員長先輩が神妙な面持ちでそう言って、みんな素直に頷いた。



「じゃー俺、おまえのこと送ってくわ」

「えっ、ありがと!助かる〜」




それから、誰が誰を送ってくか、なんて会話が繰り広げられて。

ぼんやりとその光景を傍観していれば。



急に立ち上がった女の先輩がピシッと私のことを指差した。




「ねえ、今日恭介いないじゃん!」


「あ、はい……」




そう、今日恭ちゃんは既に「用事がある」と言って委員会がはじまる前に急いで帰っていた。




「それやばいって!深見がいると思ってたからひよりちゃんのこと放ってたけど」

「もー、恭介今日に限っていないなんて、タイミング悪すぎ〜」

「てっきりひよりちゃんのことは深見が送ってくと思ってたのにー」

「ひよりちゃんとか一番狙われそうなタイプじゃん!可愛いし、大人しいし……!」




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