素直になれない、金曜日
.
.


「ごめん、待った?」



下駄箱に背中を預けて立っていた私に、砂川くんが駆け寄ってくる。

ううん、と首を横に振ると砂川くんはほっとした様子で息をついた。



「さっき廊下で先生に捕まって。資料運ぶの手伝ってたら遅くなった」



忌々しそうに顔をしかめる砂川くん。
だけど、そうやって先生に頼まれたことを断らないところが砂川くんらしいなあ、と思った。


好きだな、そういうところ。




「帰ろっか」



委員会も終わって夕日が傾く、もう夕方。
送ってくれるという砂川くんに甘えて隣に並ぶ。


もともと寡黙な私たちは歩き始めても特に会話もなく。

砂川くんといるときの沈黙は、嫌いじゃない。だけど、流石になんだか申し訳なくなってきた。




「あの、砂川くん」




ぴたりと足をとめて。
砂川くんの顔を見上げた。


砂川くんと目が合うといつも緊張してうまく息が吸えない。

ううん、緊張というより……どきどき、して。




「……私なんかでいいの?」


「は……?」




< 115 / 311 >

この作品をシェア

pagetop