素直になれない、金曜日
きょとんとした私に砂川くんは
はあ、とため息をついた。
どこか怒ったような表情は依然として保ったまま。
「自分なんか、って言って自分を卑下するの、それ癖?」
「……え」
戸惑って視線を彷徨わせた。
だって、わざと言っているわけじゃない。
……たぶん、無意識。
「軽々しく言わないほうがいいよ、“なんか” なんて。桜庭さんのこと、少しでもいいなって思ってる人の想いを踏みにじってるってことになるから」
すう、と息を吸って、また口を開く。
「聞いてる方が寂しくなる」
そう言って、砂川くんは軽く目を逸らした。
「それに俺、別に桜庭さんのこと女の子だからっていう義務感で誘ったわけじゃないし」
「それってどういう……」
「桜庭さんのこと、心配だったから」
だから、送るって言った。それだけ。
砂川くんはこちらを見ないまま、言葉を繋げる。
「少なくとも、友達だって思ってたから。俺は」
そう言って口を噤んだ砂川くんの頬が、少し朱に染まっているように見えたのは見間違いではないはず。
そんな彼の表情のひとつひとつが、全部本物で、疑う余地もなくて。