素直になれない、金曜日
どうして砂川くんがそんなことを言い出したのかはわからない。
わからない……けれど。
「え? でも……」
砂川くんの優しさにすくわれてきた数々の出来事を思い出していると、彼はそれを遮るように首を横に振った。
「ちょっと聞いてくれる?俺の話」
大した話じゃないんだけど、と前置いて砂川くんの話は始まった。
「ちょっと前まではたしかに、人に優しくいようって意識してたかもしれない。妹がいたのもあるし、父さんが “自分に厳しく他人に優しく” って口うるさかったから」
ちょっと笑ったかと思えば。
情けないから聞き流して、と呟いてから砂川くんはふっと視線を地面に向けた。
今まで1度も見たことのない表情で───まるで、迷子になった子供のような。
「全然自慢話とかじゃないんだけど。つうか、むしろ情けないんだけど」
「……」
「中学生になった頃くらいからかな、俺のことを好きだって言ってくれる子が増えて」
自慢じゃないと言いつつ、そんなことを口にする砂川くん。
……やっぱり砂川くんって女の子に人気あるんだ、と少しいじけたくなったのはこちらの話。