素直になれない、金曜日
「────桜庭さんは、なんか、ちがくて。
優しくしなきゃ、とかそんなんじゃないのに 俺の方がずっと話したい……っつうか構っていたくて、目が逸らせないんだ」
「……っ」
裏も表もない砂川くんの台詞。
たぶん砂川くんは、思った感情をそのまま言葉にしているだけ。
だけど、それは私をどぎまぎさせるには十分すぎる。
「だから俺が優しいんじゃなくて、桜庭さんが俺にとって特別なだけ」
私はいつも、きらきらした世界の蚊帳の外でその内側には入れなくて。
誰かの “特別” になりたかった。
でもそんなの絶対無理なんだって思っていたの。
だけど、そんな私のことを砂川くんは特別だと言ってくれるの……?
「砂川くん」
「ん?」
いつもだったら絶対嘘だ、私なんか……って、思っているところだけど。
“なんか” なんて言わなくていいって、きみが言ってくれたから。
「ありがとう」
その5文字に今の気持ちを託して。
すると、砂川くんは「俺別になにもしてないけど」と困った様子で笑った。