素直になれない、金曜日
頬が自然と熱くなる。
どうしよう。
今、疑いようもなく嬉しいって思った。
幸せだって。
ちらりと視線を砂川くんに向けると彼はツンとすました顔で立っていた。
俺は何もしてないから、といった様子。
そうやって恩を着せたりしないのがすっごく砂川くんらしいな、と思った。
「他にもうアイデアもないみたいだし。じゃあ、一応多数決とるか」
ほぼ決定だろうけど、と呟きながら委員長先輩がカチッと小気味のいい音を立てて、ホワイトボードマーカーのキャップを開けた。
「例年通りスタンプラリーがいいと思う人、挙手ー」
その呼びかけには誰も反応しない。
「じゃあ、桜庭さんが出してくれた案がいいと思う人ー」
バッと皆の手が挙がる。
自分の案になんて、気恥ずかしくて手を挙げられなかった私を除いてその場にいる全員が手を挙げている。
「満場一致で決まりだな」
委員長先輩がふ、と嬉しそうに口角をあげた。
同時に、ぱちぱちとどこからともなく拍手が湧き起こって。
照れくさくて、みんなから目を逸らした私に委員長先輩が小声で話しかけてきた。
「桜庭さん、本当にありがとう。助かった」
私は静かに首を横に振った。
だって、私だけの力じゃない。
砂川くんの後押しがなかったら、私はあのまま黙っていただろう。
全部、砂川くんのおかげなんだよ。