素直になれない、金曜日
「すごく純粋なんだよ。桜庭さんは。そんな桜庭さんの目にうつる世界は綺麗なんだろうなって思う」
純粋がゆえに、それで、不安になることもあるかもしれないけれど。
「俺は、桜庭さんのそういう考え方が好きだから」
だから、と言葉を繋げる。
「皆にも知ってほしいって思った。勿体ないなって思った。……から、あのとき手を挙げた。それだけ」
桜庭さんには、
「そんな、何もかも諦めたような表情してほしくないんだよ」
諦めていた、今まで何もかも。
全部遠い世界の話で、私には届かないと。
だけど。
「砂川くん」
砂川くんは、そんな私に自信を持っていいと言ってくれた。
ねえ、本当は違ったのかな。
勝手に諦めていただけなのかな。
私は今の大嫌いな自分から、変われるのかな。
手を伸ばしたその先に
変わろうとしたその向こうに
今よりずっと胸を張って歩ける未来があるなら、そう信じていいのなら、私は。
「ん?」
首を傾げた砂川くん。
私は小さく首を横に振る。
「……ううん、なんでもないよ」
私は、変わりたい。
────そう思っても、いい?