素直になれない、金曜日
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「……っ」



じわりとした鈍い痛みで目が覚めて、ぱちりと瞼が開いた。


手が少し痺れている。


どうやら、作業の途中にいつの間にか睡魔に襲われて眠ってしまっていたらしい。


手のひらを重ねて枕にして、うつ伏せに体重をかけていたのだから、手が痺れるのもあたりまえだ。



んん……と、まだ半分まどろんでいる意識をなんとか覚醒させて、上半身を起こした。



「……?」



すると、肩になにかがかけられていることに気づいて。


慌てて手に取って広げてみれば、それは砂川くんのジャージだった。



ふわりと香るシトラスに
きゅ、と胸の奥が狭くなる。



これって、砂川くんが私が寝てることに気づいて、それで、かけてくれたってことだよね。



それって、なんだか。



寝ていたことがばれたのは恥ずかしいけれど、その何気ない優しさが嬉しくて堪らない。



にやけそうになるのをなんとか抑えながら、お礼を言おうと砂川くんの方を振り向くと、今度は砂川くんが机に突っ伏していた。



すーすー、と規則正しく聞こえる寝息を邪魔しないように、そっと砂川くんに近づく。



さらりと流れた黒髪の間から覗く横顔は、相も変わらず端正に整っていて、どきりと心臓が高鳴った。


思わず、見惚れてしまう。




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