素直になれない、金曜日

そんな自分が急に恥ずかしくなって、ごまかすように、砂川くんがかけてくれた彼のジャージを今度は砂川くんの背中にかけ直した。


起こさないように、そうっと。



砂川くんも疲れているんだよね、きっと。

そう思って、砂川くんが眠っている間にできる限り作業を進めておこう、と席に着いた。



────すると。




「え……っ」




吃驚して、思わず声が漏れた。
慌てて口元を押さえたけれど、あまり意味をなしていない。



なんで、どうして。

そんな戸惑いで頭のなかがいっぱいになって。


ううん、それよりも─────




机に置いたままの栞、
うたた寝してしまう直前に思いを込めた


〈 変わりたい 〉



その小さな五文字の下に。


右上がりの少し癖のある字で
書き足された五文字。



〈 変われるよ 〉



頭のなかで砂川くんの声になって、聞こえてくる。


胸がいっぱいになる。少し苦しいくらい。
目頭がほんのり熱くなったのは、気づかないふりをして。


栞に手を伸ばして、ぎゅっと胸の前に抱きしめた。

間違ってもくしゃくしゃになってしまわないように、気をつけて。



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