素直になれない、金曜日
似合っている。
シンプルイズザベストってこのことだと思った。装飾の少なさが、かえって彼の格好よさを引き立てている。
大人っぽい服をさらっと着こなせるところが凄い。違和感は少しも感じなかった。
……格好いい。
心の中で率直にそう思って、でもそれが少し恥ずかしくて。
つい黙り込んでしまう。
生まれた沈黙に砂川くんも少し困ったように、後ろ首に片手を添えて。
「……行こっか」
そう言った砂川くんに頷いて、ふたり並んで駅の改札へ。
これから向かうのは電車で3駅ほどの隣町だ。
普段、徒歩通学の私にとっては電車に乗ること自体が珍しい。
しかも、砂川くんと一緒……なんて。
ちょっとした遠出に舞い上がってしまっている自分がいる。
浮かれ気味なのは百も承知だ。
だって、こんな風に砂川くんと休日に会えるなんて思いもしなかったから。
────土曜日、学校は勿論休み。
そんな今日、砂川くんと出かけることになったのには、ちょっとした経緯がある。