素直になれない、金曜日


わかるよ、葵依ちゃんの気持ち。




緊張して、言いたいことが言葉にできなくて
萎縮して思ってることと違うことしか言えない。


頑張って話そうとすればするほど、苦しくなる。




なんて、わかったように言うけれど、ほんとうは全部自分のことだ。





ついつい葵依ちゃんに自分を重ねてしまった。
……おせっかい、だったかな。






でも葵依ちゃんがほっとしたように肩の力を抜いて微笑み返してくれたから、私もほっとした。




うん、可愛い。

葵依ちゃんみたいに美少女だとどんな表情でも可愛いけれど、やっぱり笑顔がいちばんだ。



心からの笑顔に私の心まで癒された。




「葵依ちゃんは、おにいちゃんのことが大好きなんだって!ねっ!」




小春が葵依ちゃんを小突く。




「ちょ、小春」



「う、うん……」




葵依ちゃんに話を振った小春を思わずたしなめかけたけれど、頬をゆるめて返事した葵依ちゃんに驚いてそれどころじゃなくなる。




「ねっ、もっと葵依ちゃんのお話聞きたいな!ねーたんは聞きじょうずだから、葵依ちゃんの話もいっぱい聞いてくれるよ!」




満面の笑みで迫る小春にたじろぎながらも、葵依ちゃんはおそるおそる私を見上げる。



そんな彼女の視線に近づくため、腰を折って姿勢を低くした。






「……あ、あのね」





小春がけしかけたとはいえ、まさか本当に話してくれるとは思っていなかったから、少しでも心を開いてくれたみたいで嬉しくて。



そのまま暫くの間、小春と葵依ちゃんと3人で他愛ない話で盛り上がった。




話上手な小春を中心に、たまに葵依ちゃんも話に加わるといった感じで私は主に聞き手側。




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